円満な相続のために!家族信託のメリットとデメリットを解説
家族信託は、従来の遺言や成年後見制度では実現できなかった柔軟な相続対策が可能な新しい制度です。しかし、利用を検討する際にはそのメリットとデメリットを理解することが重要です。本記事では、家族信託を活用する際に知っておきたいポイントを解説します。
家族信託のメリット5つ!
1. 認知症による財産凍結を防げる
認知症などで判断能力が低下すると、金融機関が口座を凍結する場合があります。これにより、家族が生活費を引き出せなくなるなどの支障が生じます。
家族信託を活用すれば、あらかじめ財産を信頼できる受託者に預けることで、認知症発症後も柔軟に財産を管理・運用できます。
2. 後見制度よりも制約の少ない財産管理が可能
成年後見制度では、財産保護が重視されるため、財産の運用や資産組み換えなどが制限されることがあります。
家族信託では、本人の意思に基づく信託契約により、柔軟かつ効率的な財産運用が可能です。
3. 遺言では叶えられない想いを叶えられる
遺言は死亡後にしか効力を持ちませんが、家族信託は生前から財産の管理や運用を委ねることができます。また、遺言では指定できない財産の使い道や、残余財産の寄付なども明確に指示できます。
4. 共有相続が原因の紛争を回避できる
相続時に不動産などが共有財産になると、売却や運用の際にトラブルが起きやすくなります。
家族信託を活用することで、不動産の所有権を受託者に移転し、単独での売却や運用が可能となり、共有による紛争を防止できます。
5. 生前に財産の承継先を決めておける(二次相続以降も)
遺言では次世代以降の承継先を指定できませんが、家族信託では複数世代にわたる承継先を設定することが可能です。たとえば、第一受益者を配偶者、第二受益者を子供に設定することで、長期的な財産管理を計画的に行えます。
家族信託のデメリット5つ!
1. 税務申告の際にやることが増える
信託財産から一定額以上の収入が発生した場合、信託に関連する**「信託の計算書」や「信託の計算書合計表」を税務署に提出**する必要があります。特に不動産所得がある場合には、明細書の作成も必要です。
→ 税理士に依頼している場合は負担が軽減されます。
2. 専門家が少ない
家族信託は比較的新しい制度のため、対応できる専門家が限られています。特に、複雑な信託設計が必要な場合には、信託に特化した専門家を選ぶことが重要です。また、判例が少ないため、慎重な設計が求められます。
3. 身上監護ができない
家族信託は財産管理を目的とする制度であり、病院の手続きや介護契約の代行などの身上監護(生活面の法律事務)を行うことはできません。
→ ただし、受託者が家族であれば、信託とは別に家族の立場で対応することは可能です。
4. 節税作用は見込めない
家族信託は基本的に財産管理の仕組みであり、直接的な節税効果はありません。例えば、受益者への贈与税や相続税は適正に課税される仕組みになっており、信託で節税を図ることはできません。
5. 遺留分侵害請求をされる可能性がある
家族信託で遺留分を侵害するような設計をした場合、遺留分侵害請求が発生するリスクがあります。家族信託は遺留分を完全に回避できるものではないため、この点を考慮した慎重な設計が必要です。
まとめ
家族信託は、認知症対策や相続トラブルの防止、柔軟な財産管理を可能にする有効な手段です。しかし、制度設計にはデメリットもあるため、専門家の助けを得ながら進めることが重要です。
家族信託を活用する際のポイント
- メリットを最大化する設計:共有財産の解消や複数世代の相続計画など、個別のニーズに対応。
- デメリットのリスク管理:税務手続きや遺留分侵害請求などのリスクを事前に考慮。
- 専門家への相談:信託設計には高い専門性が求められるため、信頼できる専門家と協力して進める。
家族信託のメリットとデメリットを理解した上で、円満な相続を実現しましょう!