相続人に非嫡出子がいる場合の遺産分割協議における注意点
2025年02月18日
1. 問題となる協議・条項
被相続人である甲が死亡し、遺産として預貯金2,800万円のみが残された。甲の相続人は以下のとおりである。
- 配偶者A
- 嫡出子B、C
- 養子D
- 胎児D(出生後に相続人となる)
- 非婚関係にある女性との間の子E(甲が認知済み)
相続人全員は、胎児Dの出生後に遺産分割協議を行い、法定相続分どおりに分割することで合意した。しかし、作成された遺産分割協議書において、非嫡出子であるEの相続分が本来の法定相続分よりも少なく記載されるという問題があった。
問題のある条項例
被相続人甲の下記預貯金について、Aは1,400万円を、B、C、Dはそれぞれ400万円を、Eは200万円を取得する。
2. 問題点
非嫡出子Eの法定相続分が削減されている点が問題である。
平成25年の民法改正以前は、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされていた。しかし、改正により、非嫡出子の相続分は嫡出子と同等となった。よって、Eの相続分を減少させることは法律違反となる。
3. 適切な改善案
本来の法定相続分に基づき、正しい遺産分割協議書を作成する。
改善後の条項例
被相続人甲の下記預貯金について、Aは1,400万円を、B、C、D、Eはそれぞれ350万円ずつを取得する。
4. 法定相続人の範囲と相続分
(1) 法定相続人の範囲
被相続人が死亡した場合、法定相続人は以下の順で決定される。
- 直系卑属(子)
- 直系尊属(父母)
- 兄弟姉妹
今回は子が存在するため、直系卑属が相続人となる。
(2) 子の法定相続分
以下の者は相続において「子」として認められる。
- 胎児:出生後に生存していた場合、既に生まれていた子と同じ扱いになる。
- 養子:養子縁組をした場合、実子と同等の相続権を持つ。
- 非嫡出子:婚姻関係のない男女の間に生まれた子も、嫡出子と同等の相続権を持つ。
5. まとめ
非嫡出子の相続分を嫡出子と同等に扱わなかった場合、遺産分割協議は無効となる可能性がある。適切な遺産分割協議を行うためには、法定相続分に基づいた分割案を作成する必要がある。
司法書士法人 おうみアット法務事務所では、相続に関する正しい知識をもとに適切な遺産分割のサポートを行っております。お気軽にご相談ください。